生活保護の受給が増えています。東京で生活保護受給が多い区と少ない区はどこでしょうか?調べてみました。
経済的に生活が苦しくなってしまった時、支給されるのが「生活保護」です。
国や自治体による貧困支援のひとつであり、法律的にも国民に認められた権利です。
家計の悪化には、失業や病気、あるいは離婚や介護などさまざま理由があるかと思いますが、そのよう場合においても健康で文化的な生活をおくるためのセーフティネットが「生活保護」なのです。
よく聞く言葉ではありますが、その仕組はなかなか知らないものですよね。そこで生活保護について調べてみました。
まず、生活保護で受給される金額についてです。
とは言え、これを実際に計算するのはなかなか複雑。
受給者の年齢や病気や障害度、あるいは世帯の構成や子育て事情などその受給者それぞれの事情によって金額が異なっているからです。
それに、住んでいる地域によっても金額に違いがあります。
日本全国の市区町村が物価や状況によって等級別に分けられていて、その等級ごとに支給金額が変わってくるのです。
例えば、31歳独り身の場合で考えてみます。
そして、東京23区に住んでいたとします。
この場合、23区は1級地ー1の等級に分類されているので、生活扶助額は79,230円となり、住宅扶助額は53,700円(※最高額)です。なので合計132,930円が月額として支給されるのです。
生活扶助とは生活保護の一つで飲食や光熱費など日常生活のために支給されるものです。住宅扶助とは家賃などのために支給されるもので、その住宅の広さなどで決められます。他の扶助としては、教育扶助や医療扶助などがあり、それらを合わせた額が支給されます。
一方で、郊外のあきる野市に住んでいた場合です。
あきる野市は2級地ー1の等級に分類されてるので、生活扶助額は71,620円、住宅扶助額は45,000(※最高額)となり、合計116,620円が月額となるのです。
このように、
金額は住む地域によって違ってくる
のです。
下リンクの厚生労働省のサイトを見ると、それぞれの地域の区分が書いています。
さすがに都心部と郊外だと物価や住宅費も大きく変わってくるので、支給額も差が出てくるのでしょう。
しかし、この級地区分の各地域を見てみると気付くことがあります。それは
東京23区と、多くの市は1級地ー1に該当
しているのです。
1等級ー1の等級だとどの地域も支給金額は同じです。
つまり、住居費が高い港区や世田谷区も、安いとされる足立区や台東区も同じ級地であり、もらえる金額が同じなのです。
スポンサーリンク
スポンサーリンク
このような生活保護の仕組みを踏まえた上で、東京都の生活保護受給の多い区と少ない区について見てみます。
まずは、東京23区で生活保護世帯数の多い区を順に並べてみました。
生活保護受給世帯数の多い区は「足立区」、「江戸川区」、「板橋区」、「大田区」、「練馬区」であり、少ない区は「千代田区」、「中央区」、「港区」、「文京区」、「目黒区」です。
やはりお金持ちが多そうな区は生活保護が少なく、ブルーカラー色がする区は生活保護が多いなぁ。
さらに生活保護受給世帯数について考えてみます。
上の図は単純に生活保護受給世帯の数を並べただけです。しかしながらですね。区によって人口って大きく差がありますよね。例えば足立区は70万人近くが住む巨大な区だけど、千代田区は5万人足らず。人口が多いと比例的に生活保護世帯数も多いのではとも考えられます。
そこで、こんどは各区の生活保護受給世帯の割合をみてみます。
貧困世帯数をその区の全世帯数で除してみました。
以上のようになりました。
すると、圧倒的に貧困世帯の割合が高い区として「台東区」が浮かび上がりました。
台東区と言えば東京唯一のドヤ街である「山谷」がある区です。
山谷を歩いてみて思ったのがドヤ街ならではの混沌とした雰囲気なのですが、それ以上に街も住民達も高齢化が進んでるなと感じました。
台東区は23区でも高齢化率が最も進んでいる区です。
高齢化と貧困度とは相関があるとされていますが、たしかにこの台東区では旧来の労働者の人達が高齢化によって働けない状態です。しかも資産や年金の充分な積立が出来てない老後なので、やはり頼るべきは生活保護ということになり、台東区の生活保護受給世帯の受給割合が高いのではと。
高齢化による貧困問題が大きいのが台東区です。
生活保護受給の世帯数が一番多かった足立区は、割合でも2位でした。
足立区といえば貧困問題がよく話題に上がりますが、やはり足立区は貧困度が高い区なのではと。
しかも足立区の人口統計としては、高齢層だけではなく若年層も多く住んでいる区です。ということは高齢化による貧困問題だけでなく、若い世代や子どもの貧困も多く存在しているのではと。
さて、このようにひとくちに生活保護受給と言えども、その背景にある貧困においては、それぞれの区ごとに原因や特徴が異なってきそうです。
東京のどの行政区において、生活保護受給および貧困問題が生じているのか?わかりやすくするために、生活保護世帯割合の大小で行政区を色分けしました。
割合が高い区ほど濃い赤色で表し、逆に低い区ほど濃い青色となっています。
結果は、「足立区」「荒川区」「台東区」を中心に、23区の北西部が赤色が強い状態でした。
この地域は旧来のブルーカラーベルトと呼ばれる地域であり、昔からの小規模工場が多く労働者や職人の人々が多く住んだ地域です。その地域性と共に、地価の安さや福祉行政の充実などさまざまな要因によって生活保護受給世帯の割合が高いのではと推測します。
逆に、「港区」「中央区」は生活保護割合が低く、それは住民の所得が高いということを表します。お金持ちが多く住む区なんですね。
「立川市」「清瀬市」は高く、「国立市」は低いという状況。
隣り合っている行政区であっても、片方は生活保護の割合が高く片方が低いというのは、成立ちや地価の違いなのかはたまた行政の対応なのか、その理由を探すのはなかなか難しそうです。
「あきる野市」の生活保護世帯割合が低いのは、東京都の市区の中でこの2つだけが2級地 - 1 に分類され、生活保護受給額が安いということが関係しているのかもしれません。
さらにですね。
10年前、平成17年(2005年)の生活保護受給世帯割合の地図を描いてみました。
こんな感じでした。
これが平成27年(2015年)になると。
割合が1%代の自治体を水色(特に濃い青は1.5%未満です)に塗り分けたのですが、この水色・濃い青がだいぶ少なくなり、多くの自治体が黄色(2%以上)や橙色となっています。
確実に生活保護受給の割合は多くなっています。
その背景には、高齢化が進んでいること。そして経済構造の変化により家計収入が低い世帯の増加が考えられます。非正規労働やワーキングプアなどの増加ですね。
貧困がじわりじわりと増えている感覚を改めて感じました。
23区の生活保護受給世帯割合を、平成17年を基準にして、平成27年とグラフにして比較してみます。
千代田区、港区、中央区など一部の区を除いて、多くの区が10年前に比べて増加しております。
このように貧困問題は大きくなりつつあります。
単に生活保護受給の一面的な話ではなく、年金や社会保障などセーフティネット全般、教育や働き方の改革、あるいは構造改革などの経済政策まで合わせた幅広い視点からの解決が求められるんだなとつくづく感じます。
スポンサーリンク