地震による建物倒壊や火災。津波や台風での洪水など災害への備えの基本が、東京都や23区。国交省による防災ハザードマップです。
東日本大震災やスーパー台風による被害を目にした時、あらためて思うのが日々の防災の大切さです。
しかし悩むのが、何をすれば良いのかが分からないもの。
もちろん防災グッズの用意は大切だけれど、実際問題としてグッズを持っているだけでは命や財産を守れるわけではないし、行政の指示を待ってるだけでは避難が遅れてしまう可能性もあります。
何よりも大切なのは防災への知識を自分で持っている事です。
そんな時に一番役に立つのが「ハザードマップ」なのです。
住んでいる場所や職場がどのような災害が発生しやすく、もしもの時はどのように避難をすれば良いのか。あるいは日常時や住宅購入時における災害リスクを考えるきっかけにもなります。
各行政が専門家を集め、実際にその場所を調査しながら作成されたものなので、極めて信頼性が高く、実際の災害の発生はハザードマップどおりだったという確率がとても高いのです。
個人的に一番便利なのは「紙」のハザードマップ。
各区役所や出張所、あるいは防災センターなどに行くと置いてあり、無料で手に入れられるのですが、普通の街地図や冊子形式になっていて理解しやすいように作られています。
例えば災害の種類ごとにリスクが色分けされていて、その場所の危険性について知ることが出来ます。
区や地区の全体を広げて見れば、どこにどんなリスクがあって、その原因となる河川や崖といった地形を一覧的に確認することも出来ます。
紙なので書き込むことが出来、自宅の場所を塗りつぶしたり、避難場所への経路や危険性についてメモをしながら考えることも出来ます。
防災においてはその地形を理解することが何よりも肝です。実際の地形や建物を思い浮かべながら、その場所のリスクについて自分の頭で考えるというのがとても大切だと思うのです。
なのでお住まいの区役所や市役所に行った時には、ぜひ紙のハザードマップを手に入れておくと良いでしょう。
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各自治体のハザードマップはWeb上で公開されています。
しかしこれは行政の弱さといいますか、弊害といいますか、Web上での閲覧はとても見辛いです。各自治体はそれぞれの行政区ごとの情報ですし、地図の操作性は悪いし、PDFだったりもします。
もし東京のハザードマップをWeb上で見たいなら、国土交通省による「重ねるハザードマップ」がおすすめです。
これは東京ならず全国の災害リスクを一覧できます。
行政地区の壁に縛られずに、洪水や津波による浸水、あるいは土砂災害の危険性。地形との関係性について全体的に見ることが出来るのです。
今回被害が大きかった多摩川沿い。武蔵野台地の下の二子玉川駅周辺は低地なので洪水危険性が高いのです。
また便利なのが、ある特定の場所をポイントすれば、その場所の地形による災害危険性、そして該当の自治体ハザードマップへのリンクを表示してくれるところです。
これを使えば、全体的な視点で災害リスクを把握しながら、ピンポイントの危険性について知ることが出来るのです。
さて、ここで東京の地形を見ながら、災害の傾向を考えたいと思います。
まず、東京の基本的な地形は「西高東低」です。
西側は「山の手」と呼ばれた地域であり、武蔵野台地の高台であり地盤が強く、昔から災害に強いと言われています。
東側は「下町」と呼ばれた地域であり、埋立地も多く海抜ゼロメートル地帯と呼ばれる場所もあります。
東京の全体像を見る場合、この地形が基本となるのでこのことを認識しておくと良いでしょう。
例えば東京中心部から北側へのJR線が高台と低地との境となっているのですが、その西側は高台であり、東側が低地となっているのです。
この地形がいろいろな災害の危険性に影響してきます。
例えば上記の重ねるハザードマップで「洪水」の危険性について見てみました。
こう見ると、東京の東側の「下町地域」は全体的に赤く染まっており、洪水の危険性が高い地域であると考えられます。一方の西側の「山の手」地域は全体的に見ると洪水の危険性は少なめです。
今回被害が話題となった「多摩川」沿いも赤く染まっています。二子玉川や武蔵小杉などがある場所は元来は多摩川が流れる土地であり、洪水の危険性が高い地域なのです。 参考⇒ 【高級住宅街】 お金持ちの豪邸が並ぶ二子玉川 - 東京生活.com
また、この西高東低の地形は地震による液状化被害にも影響してきます。
これは内閣府の防災ページに載っていた東京大学生産技術研究所による首都直下型地震の被害予想なのですが、歴史的に埋め立てによって造られた東京の東側は液状化被害が大きいと想定されています。
とは言え、これはその土地が埋め立てられた時代にもよるようで、一概に埋立地だからといって液状化現象が起こるわけではないようです。予想っていうものは難しいですね。
同じく地震による被害を考えると、東京においては津波よりも火災の方が怖いです。
東京の中心をぐるっと囲むような地域の被害が想定されています。
これは下町、山の手関係なく、東京の環状地域です。
理由としては火災の延焼を防止出来る、幅の広い道路や空間が少ないことが最も大きいようです。あるいはこれらの地域は密集した住宅が広がっているため地震による建物倒壊のリスクも大きく、必然的に火災の危険性が高いのです。
一方で、東京においては津波の被害というのは少なめに考えて良さそうです。
基本的に東京湾は奥まっているせいか津波による被害は、沿岸地域において0.5m~1.5m前後という予想であり、浸水の可能性はありつつも東日本大震災のような大津波の可能性は低そうです。
なお、太平洋に直接面している湘南地域や相模湾沿岸は大きな被害が予想されていますので、その地域においては注意が必要です。
▽ 首都直下地震等による東京の被害想定(平成24年4月18日公表)|東京都防災ホームページ
▽大田区ホームページ:津波対策事業(津波ハザードマップ・標高図)
さて、では東京で安全な場所はどこなのでしょうか?
下町地域や多摩川沿いは水害の可能性が高そうだし、湾岸地域は津波浸水や液状化の可能性が高い。かといって山の手地域も火災や建物倒壊の可能性が高い。また近年頻発するゲリラ豪雨だと局地的に水が溢れるリスクもあります。
結論から言ってしまうと、絶対に安全な場所など無いということになりそうです。
そして、災害による被害というのはその時々の条件によって大きく違ってきます。
例えば今回、荒川地域の被害がそこまででもなかったのも、その上流地域での雨の降り方もありますし、もしくは歴史的に氾濫が起こった荒川は治水の整備がより強化されているという点もあります。
荒川の治水はそれこそ江戸時代の頃から行われていて、かなりの大雨でも対応出来ると考えられています。
他の災害に対するリスクも、例えば湾岸エリアの新しい埋め立て地域は先端的な地盤改良によって造られていますし、山の手地域は密集住宅地の解消への努力もつづけられています。
結局は、災害とはその時々に大きく変わるものであり、出来る事としては自分の居る場所のリスクを認識して、普段から準備をしたり、住む場所を選んだりということくらいじゃないかなと思います。
そのための情報収集の手段として、自治体におけるハザードマップが最も信頼出来るものであり、簡単に手に入れられるものとしてオススメなのです。
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