鳥獣戯画見てきました。
外で並ぶこと約70分。
中に入って、一番人気の甲巻を見るために約120分。
平日だったのですが、合計3時間くらいの行列が出来るほどの大盛況でした。
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それにしても、なんで、こんなに人気なのでしょうかねぇ。
鳥獣戯画は漫画やアニメーションの原点だからかな。
とは言っても、鳥獣戯画を見るだけならばWeb上でもすぐに見ることが出来ます。
やはり本物の凄さというのでしょうか。
たしかに、実物を見た時はその立体感や今にも動き出しそうな感覚がしました。
この感覚はいったいなんなんだろうか。
墨や紙の質感故だろうか。
むむむ。
わからない。
そこで最近気になっている、人気日本画家の山口晃さんの本から引用。
やはり透明度と云うものは、定着した紙面では表現が難しいのかもしれません。たとえ静止して見ていたとしても、人間の目は絶えず一ミリ、二ミリといった具合に動いているものです。視点が移動すれば、画面に差し込む光の見え方もそれに応じて変化します。そのずれが透明感を生んでいるのですから、それを印刷ではなかなか出せないのでしょう。
出典 ヘンな日本美術史
なるほど。
印刷では再現出来ないほどの絶妙な墨の透明度によって。
見ていて視覚的に気持ち良いのですね。
この視覚的なのは何なのかと謎だったのですが、
やはり実物は一回でも見てみるべきです。
ただ、これだけの行列だと覚悟が必要だし、効率の良い回り方を案内します。
・出来るだけ朝早くに行く。開館前に並ぶくらいがちょうど良い。
・何よりも最初に甲巻を見ておく。
・外の暑さと、中の冷房の寒さへの対処。
・トイレには行けないと考える。
さてさて、今回の展示において鳥獣戯画は、あくまで一部分なのです。
鳥獣戯画を所蔵する、京都高山寺と明景上人に関する展示なのです。
▽東京国立博物館 - 展示 日本考古・特別展(平成館) 特別展「鳥獣戯画─京都 高山寺の至宝─」
たぶん多くの人が鳥獣戯画ばかりに目が行きがちだったけど(僕もです)、それだけだとあまりにもったいない。
鳥獣戯画という、漫画の前身のような優れたフォーマットを生み出したのがこの高山寺であるということです。
(実際は生み出したかどうかは微妙だけど、なんかしらの関係性があったことには間違いない。)
高山寺は、大きくないし観光名所ではないので地味だけど、学問や研究に力を入れていた寺院で、多くの文化財を伝える寺として知られてます。
日本最古の茶園があったのもこの寺院で、ここから宇治に広がり、さらに全国に広がったとされています。
まさに、当時のクリエイティブの宝庫です。
その高山寺という最先端のクリエイティブセンターを見学する気分で展示を見てみると面白かったです。
鳥獣戯画ともう一つ展示されていたのが、国宝の絵巻物。
華厳宗の祖とされる義湘と元暁の伝記で、紙本著色華厳宗祖師絵伝というものです。
二人の物語を絵で描いているのですが、ここで特徴的なのは、画中に人物の発言が漫画の吹出しのように書かれているのです。
この技法は、この絵巻物以前には見られなかった方法ということで、これは世紀の大発明ですよね。
これらを見て思いを馳せていたのは、はるか昔の人も、人に何かを伝えるという事に心血を注いでいたのだなと。
今風に言うならば、より優れたユーザーエクスペリエンスの追及とでも言いましょうか。
単なる仏画だと人に何かを伝えること事は難しくて、そこに文字を入れるようにした。
さらには、それをつなげることで物語化することが出来たと。
そして、とうとう文字も用いずに絵だけで何かを表現するようになったと。
識字率の低い当時において、文字を使わずに人に何かを伝えようとした結果、生まれてきたのがこの鳥獣戯画だったんじゃないかなと。
人に分かりやすく物事を伝えるために、工夫したり、考えたり、悩んだりしていることは、今の刻々と変わるデザイン環境やデバイスの進化の中でデザインが重視されている現在にもつながるんじゃないかなと思いました。
そう言えば、スマフォの縦スクロールで物を読むという動作は、本というよりも絵巻物に近い感覚ですよね。
それにしてもこの高山寺。
かなり気持ちの良さそうな場所でした。
今回の展示でも入り口に四季折々の高山寺が3Dで浮かび上がってくる映像があったけど、美しかった。
優れたクリエイティビティとはこういう場所で生まれてくるのかもしれませんね。
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