池波正太郎のお店と言えば、敷居が高くてなかなか行きにくいイメージですよね。
でも、カレーならば手頃な感じがしませんか?
池波正太郎は、渋谷にある「ムルギー」のカレーを愛用してたようです。
食べログで調べてみたら、まだこのお店があるということで、初めて池波正太郎の本を参考に行ってみることにしました。
スポンサーリンク
スポンサーリンク
場所も渋谷ということで、これまた銀座に比べると行きやすいです。
渋谷駅から道玄坂を登って行き、百軒店の通りを入って行く。
この辺りは、どぎつい風俗店の看板やラブホテルが並んでいる街で、池波正太郎とは相容れない感じですが、とにかくこのお店はあるんですね。
創業が昭和26年(1951年)ということで、カレー屋さんとしてはかなりの老舗ですよね。百軒店というのは、西武主導による開発計画によって、百軒以上のお店を集めて百貨店のような街並みにしようとするもので、昔のこの辺りは飲食店とか映画館とかが数多く集まっていたらしいです。それこそ渋谷の中心的な娯楽エリアだったので、今の静かで怪しげな雰囲気とはだいぶ異なっていたのかもしれません。
お店の雰囲気は、その時代からタイムスリップしてきたような感じで、煉瓦の入り口から入ってみると、白い壁にこれまた煉瓦のような壁。座席は高い敷居に席が区切られていて、なんだか半分個室みたいだし、天井から下がっている照明は、昭和の雰囲気のままで、ノスタルジックな形です。
一番人気だという卵入りカレーを注文。
赤色と黄色とが鮮やかな、たくわんと福神漬けを持ってきてくれます。
テーブルには先っちょがナプキンで包まれているスプーンが置いてあり、お冷を飲むとややレモンの香りが。
それほど待たないうちに、カレーが運ばれてきます。
山が好きだったという先代が考案した、文字通り山のように盛られているご飯にカレールーがかかる。このカレールーは、色がごちゃごちゃとして、なんか肉やら野菜やらが色々と混ざって煮こまれていそうなことを予感させました。現代の洗練されたきれいな感じのルーとは違うものを感じますね。
輪切りのゆでたまごがぽんぽんぽんと並べてられていて、一筋のケチャップがかかっています。
味は辛いというほどではないんだけど、想像してたよりもスパイシーなので、ゆでたまごのまろやかさで適度な味になっていました。
山の形のごはんがやや固めな感じなのは、定番なのでしょうか?ただ、その分よく噛みながらカレーの味を楽しめました。
皿の端に、野菜や果物をすりつぶしてペースト状になっているチャツネが添えられていたので、最後にはそれを混ぜあわせて、フルーツの香りを楽しみました。
お店でかかっているBGMは有線で今の曲じゃなくて、備え付けられたステレオから懐かしそうな音が流れています。なんというか、昔の街頭で、やや割れた音で流れてくるシャンソンソングみたいな感じの曲。
周りには、けっこう高齢の男性が一人で食べてたりするんですね。斜めがけにした鞄を持ち、帽子をかぶった散歩スタイルで。もしかして昔の懐かしい味を、ひとりでふらっと食べに来てるのかもしれません。
周りの空気に引き込まれて、僕も昔の渋谷百軒店に迷い込みそうに。
その時、カウンターに置いてあった黒電話がジリジリジリーと鳴ったんですね。
いつまでも鳴り止まないその音は、僕を現実に引き戻す目覚まし時計のようでした。
スポンサーリンク