ネットを強みに小売業の覇者となった「Amazon」。その強固なビジネスモデルと未来の買い物体験を紹介します。
注文していたAmazonのEchoDotがついに届きました。
いわゆるスマートスピーカーであり、音声ひとつでいろいろな事が出来ます。
「アレクサ、今日の天気は?」
「今日の東京の天気は晴れで、気温は28℃でしょう」
アレクサ(Alexa)というAIアシスタントが搭載されていて、まるで優秀なコンシェルジュに相談するかのように質問すると適切な答えを返してくれるのです。
質問以外にも例えばこんなことが出来ます。
「明日の11時にA社で打ち合わせを登録して」
アレクサはGoogleやMicrosoftなどお使いのカレンダー機能と接続出来るため、予定を音声で登録したり、その予定の時間になったらリマインダーで教えてくれたりが出来るのです。
「今日の11時から打ち合わせが入ってます」
Amazonには電子書籍「kindle」があります。
私も大いに利用しているのですが、なにかと場所をとる書籍。それをクラウド上に置いておく事はとても便利です。
さらにこのkindleで購入した電子書籍。AmazonEchoがあると音声で読み上げてくれるのです。
「吾輩は猫である。名前はまだ無い。どこで生れたか頓と見當がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニヤーニヤー泣いて居た事丈は記憶して居る。」
正直、パソコンにスマートフォンの使用が多い今日このごろ。さらに電子ペーパーとなると目の疲れが半端ないです。夜の寝る前とかはアレクサに読みたい本を読んでもらいましょう。
そして眠くなったら電気を消してもらいましょう。
「アレクサ、電気を消して!」
このようにAmazonEchoが一台があると色々なことが出来ます。
私の場合は寝室のベッド横に置いておいて寝る前や起きた後に色々とアレクサにやってもらっているのですが、例えば仕事場だと有能な秘書にもなり、キッチンだと料理を作るアシスタントになり、リビングだとベビーシッターにもなってくれます。
使い方次第でとても便利な存在。それがAmazonEchoなのです。
それにしても、Amazonはこのようなスマートスピーカーをなぜ販売したのでしょうか?
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このAmazonEchoにこそアマゾンの戦略が見え隠れします。
今や小売業の覇者とも言えるアマゾンですが、創業者のジェフ・ベゾスがワシントン州の自宅のガレージでオンライン書店のAmazon.comを開始したのが1995年。
そこから20年でアマゾンはインターネット小売の王者であることはおろか、私たちの生活に欠かせないような存在となったのです。
創業事業は本をインターネットで売るオンライン書籍だったわけですが、この「本」という商品を選んだからこそアマゾンの今の姿があるように感じます。
「本」という商品は物としてとらえると「小売と物流」であるし、その実質的な価値でとらえると「コンテンツ」。
アマゾンの年表を見てみると、この2つの視点を両軸のように成長させながらサービスを充実しています。
コンテンツのこと | 物流のこと | |
---|---|---|
1995 | amazon.com開始 | |
1998 | 音楽配信サービス開始 | |
2000 | amazon.co.jp開始 | |
2002 | AmazonWebServices開始 | Amazonマーケットプレイス開始 |
2005 | 新物流センター「市川FC | |
2007 | AmazonKindleとKindleストア開始 | |
2012 | 日本向けのKindleストア開始 | |
2015 | プライム・ビデオ開始 | PrimeNow開始 |
2017 | Amazonフレッシュ開始 | |
近い将来 | AmazonPrimeAir(ドローンと自社輸送機の計画) |
アマゾンと言えば株主に配当を行わずに設備や研究開発や買収などに再投資を行うことで有名ですが、まさに莫大な投資を何度も何度も繰り返して巨大で強固なシステムを作り上げたのです。
「小売と物流」そして「コンテンツ」は昔だったらいくつもの企業が介在し複雑な生態系のような様相だったわけですが、これらを世界規模で全てを吸収し唯一無二の存在となったのがアマゾンなのです。
さて、アマゾンの強みと言えばこのようなEコマースの代名詞であり、絶対的存在であるブランド価値があります。
しかしそれだけに留まらず、これら「小売と物流」そして「コンテンツ」を運用する上でのシステムにこそ本当の強さがあるのです。
例えばEコマースの根幹をなすコンピューターのクラウドサービスにもそれは表れています。
出典:• Cloud infrastructure services market share by vendor 2017 | Statistic
クラウドサービスとはサーバーやデータベースなどをインターネットを通じて提供する今の事業活動において欠かせないものですが、そのシェア率を見てみるとアマゾンのAmazonWebServicesが世界1位です。2位にMicrosoft、3位がIBM、4位がGoogleという巨人達を差し置いての1位であることを考えると、アマゾンのシステムがどれだけ強いかということを実感出来るでしょう。
と同時に、アマゾンの利益の大部分はこのAmazonWebServicesによるものといっても過言ではありません。
2018 Q2において。othersは北米($1835MM)およびその他地域($-494MM)における直販およびマーケットプレイスのEコマース、AmazonPrimeなどです。
出典:Amazon - Investor Relations - Presentations
AmazonにとってEコマースが主要サービスであることに間違いはありませんが、商売という視点で見てみると儲けが大きいのはこのクラウドコンピューターサービスによるもの。まさにこの利益があるからこそEコマースサービスの充実に投資が出来るのです。
簡単に言うと、人気の駅前に土地を持つ大家さんが不動産運営で儲けを確保しながら自分のお店をやっているようなものであり、流行りに関係なく顧客満足を考えたお店を作れるのですね。
一方で、日本のインターネット通販大手である「楽天」。楽天は金融サービスによって儲けが出ています。楽天経済圏や楽天ポイントに力を入れている理由がやはりあるんだなぁと感じました。(参考)→【楽天経済圏】強みは「楽天ポイント」徹底的な使い方
同時に、私たち消費者にとってみるとアマゾンは生活に欠かせない存在となりつつあります。
まるで秘書のような存在のアレクサで買い物をする場合はもちろんアマゾンで注文することになります。
本来だったらインターネットで物を買う場合は楽天やYahooショッピングなど検索比較しながら買い物をしてたことが、Amazonだけで買い物することになります。
他にも「コンテンツ」の視点から見ると本はkindle、映画はPrimeVideo、音楽はAmazonMusicと一つにまとめると使いやすいですし、一度使い始めると他のサービスに移りにくいのです。
また「小売と物流」の面から見てもアマゾンには注文から1時間で商品が届く「プライムナウ」や生鮮食品を届けてくれる「Amazonフレッシュ」があります。
これら全てが便利で効率的な買い物のためであり、これらは私たちにとっては既に便利なインフラのような存在。
言うならば水道や電気のように絶対に手放すことが出来ないものであり、これらのサービスの維持のためならばお金を支払っても価値があると考えるほどのものだからこそ定額制の「Amazonプライム」が成り立つのです。
個人的にもやはりAmazonPrimeは便利です。
「当日お届け便」など配達の便利さもありますが、PrimeVideoが見放題、PrimeReadingで雑誌が読めたりとコンテンツ面での楽しみもあります。月額400円で色々なサービスが利用出来るところが便利なのです。
さて、このようなアマゾンはこれからも新たなサービスを続々と登場することでしょう。
そしてその根底にあるのがテクノロジーの進化であり、ドローンやIotそしてAIなどの発展に合わせた買い物を私たちに体験させてくれると思います。
例えばアマゾンの倉庫ではロボットが縦横無尽に動き回り荷物を仕分けし人が要らなくなっていると聞きますが、小売りにおいてもアメリカのシアトルにおいて自動決済によってレジ係が居ないコンビニ「AmazonGo」がオープンしました。
この人が要らないというのはアマゾンにとっての一つの答えであり、同時に未来の買い物体験の一つだと思います。
色々と問題提起も起こりそうですが、これから先はこのような買い物が基本になることは間違いなく、労働者としても消費者としてもアマゾンの戦略は私たちの生活に大きく関わってくることでしょう。
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